ブラックバイトをバックれた話

 

 バイト先を選ぶときは絶対に選んではいけない3つの条件がある。

  1. 全国チェーン飲食店(特にフランチャイズ
  2. 駅近などの忙しいお店
  3. 食べ放題のある店

 

 この3つの中の一つでも当てはまる店舗は怪しい。かくいう僕はこの全ての条件が当てはまる店で大学入学後初のバイトをしてしまった。それはそれは今思い出しても胸くそが悪い。ぼーっと座ってたら涙が流れてくるような日々だった。

 

 

 

 

 僕が実際にブラックバイトしていたお店は、誰でも1度は行ったことのある某焼肉チェーン店だ。牛の角がどうたら、、、あとはロバートがCMとかもしているね、、そう察してくれたね?そこだ。では面接からバックれまでの話をしよう。

 

 

 

 道でアルバイト募集の案内を見つけた僕は、その店になぜかいいイメージがあって1度もお店に来店せずにいきなり応募してしまった。まずはじめに面接に行くと、1時間近く事務所で待機させられた。そこはとても小さく、汚い、豚小屋みたいなところだった。(牛の角なのにね、、)そのあと到着した店長はお詫びの一言もなく、くわえタバコでどんどん質問をしてくる。

 

「なんでここで働きたいの?」

「週何回はいるの?」

 

 発言の仕方にはすごく引っかかったが大人っていうのはこういうものなのだと自分に思い込ませ我慢して答えていた。質問はさらに続く。

 

「童貞なの?」

「セフレとかいるの?」

 

は?????

 

 今思えばなんて質の低い大人なのだろう、と思うが大学入学直後の社会経験がない僕はこれが普通なのだと思い必死にその質問にも空気を壊さないように食らいついていった。愛想よく頑張ったおかげかその場で採用をもらい無事に?働き出すことになった。

 

 

 初めてシフトに入るときはとても緊張した。まさに右も左も分からない状態である。しかし、新人教育などは一つもない。店がどんどんと忙しくなっても、僕には一つも仕事が回ってこない。何も教えてもらえない。どうすればいいかわからず、立ち尽くしていると、「周り見ててめえも働けよ、何しに来てんだよ」怒鳴られた。

 

は??????

 

今なら、どう考えてもおかしいとわかるのだがそのときは自分が働けていないのが罪悪感としてあったので何も言えず、とにかく先輩の真似をして動いた。ただ、新人なので何をしていいのかも全然わからない。ずっと足を引っ張りミスを連発していた。その日のバイト終わり、店長にお疲れ様でしたと挨拶をすると、

 

「お前、あんま仕事できねえやつだな」と言われた。

 

 

家に帰ってから、何をしていても涙が止まらない。悔しいのか悲しいのか惨めなのか、それの全てなのか、また全く別の感情なのかもわからない。生まれて始めての感情だった。ただ、このままやめてしまったら何も残らない、逃げちゃダメだ、僕から仕事は聞いてできるようにならなきゃ。と、思考法を変えがんばろうとしてしまった。今思えばそれが全ての元凶だった。

 

 次のシフトから、優しそうな男の先輩に仕事の内容を聞き、自分なりにすごく頑張った。毎回、毎回、言われたことはメモをして家に帰ってからもメニューを単語カードで覚えたりもした。2ヶ月もたつとだんだんと業務にも慣れてきて動けるようになってきたが相変わらず店長には怒鳴られっぱなしだった。”次ミスしたら殺すぞ” ”まじ帰れよ”

”いてもいなくても変わんねえよ” ”消えろ” ”死んでもいいぞ” 常人が思い付く悪口のレパートリーは全部制覇しただろう。僕のメンタルが弱いのもあるかもしれないがその2ヶ月間は何にも手がつかなかった。バイトのせいで朝も起きるのが辛く、毎日吐き出しそうだった。そこで逃げ出せばよかったのだが、中高ときつい部活にいたせいもあってかやめるのは悪の気がしてずっと何も言い出せなかった。

 

 気がつけば季節は変わり半年が経とうとしていた。少しは動けるようになってきた僕にも後輩ができてくるようにもなっていた。すると、店長の怒鳴る相手がその後輩にかわっていった。しかし、僕は見ていられなかった。高校生の女の子が店長に怒鳴られて泣いているのが我慢できなかったのだ

「店長、新人ばっかりいびって何がしたいんですか、ストレス解消だとしたらそんなことで解消できるストレスも小さなもんですね、全部くだらないっすよ」

 

 なんて言葉でも言い返せればよかったのだが、僕は何もできなかった。そんな自分の無力さにも嫌気がさし、全部が嫌になった。一種、自暴自棄的になりそのまま僕はバイトにいかなくなった。店からの電話がとんでもない数きたが全部無視した。このまま、家に来られたらどうしようなどとも思ったが、そのときはその店長も一緒にそのまま警察に行って全てを話せばいいだろうとも思っていた。だが、電話がきたのも2日間だけで気づけば何も来なくなった。そしてその1ヶ月後、その女の子の後輩から連絡があり、僕がやめた扱いになっていることを知った。さらにその女の子もバイトをやめていた。その連絡をもらった瞬間、肩の荷から全てがおり、解放された気分になった。あの時の開放感は射精の開放感にも勝てない。なんとも言えないものだった。

 

 

 その後は、個人経営のバーでバイトを始めた。今までが嘘のように楽しいバイトだった。やっと、人生が始まったかのような感覚にもなった。

 

 

 

 

 

 

 

もし、バイトが辛い人がいたのなら今すぐやめてください。無理しても何もいいことはないです。辞めにくい、言い出しにくいのならばっくれてください。それがあなたの身を守る方法です。世の中、みんな自分が一番大切です。あなたも自分を一番大切にして生きてください。お願いします。